この講座は、
「読むテニスの教材」として、
テニスのレベルアップに役立つ情報や、
テニスの上達法、
テニスの練習法、
最新のテニスグッズ
などを紹介していきます。
今回はラケットの話です。
テニスラケットに「三種の神器」と言われる名ラケットがかつてあったのをご存知でしょうか?
今の中高生からしたら、
「なんだそれ?」
って話かもしれませんが、
今の40代、50代あたりの人は、
「あー、なつかしいね。」
という話かもしれません。
今はもう「三種の神器」なんてことは、テニスラケット業界では死語かもしれませんが、テニスラケットの発展の歴史を語る上では避けて通れないものなので、ぜひ一度書いてみたいと思います。
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三種の神器と言うと、本来の言葉としては、天皇家に伝わる秘宝のことですね。
①天の叢雲の剣(あめのむらくものつるぎ)←「あめ」って読んだり、「あま」って読んだり、日本語はむつかしいね。
②八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)
③八咫の鏡(やたのかがみ)
の三つのことです。
で、それになぞらえて、テニスラケットにおいても、過去にトッププロの選手たちに人気のあった3つのラケットを「三種の神器」なんて呼んだりしていました。
もちろん、そんなのは、日本特有のものであり、海外ではそんなの言ってみても通じないでしょう。
ただ、その時代の人であれば、海外の人でもなんとなく、
「プロと言えばこの3本のラケットが主流だよな」
というくらいの感覚はあっただろうと思われます。
では、その「三種の神器」と呼ばれたラケットを順に紹介していきましょう。
WILSON PROSTAFF
ウィルソン プロスタッフ
ロジャー・フェデラー選手が使う名器という印象が強いかと思います。
ちょっと前の世代だと、ウィルソンと言えば、ピート・サンプラス選手がその象徴でした。
サンプラス選手が使っていたプロスタッフは、プロスタッフシリーズの中でも特に面のサイズが小さいもので、フェイスサイズが85インチくらいだったと思います。現在のテニス界では、そのような面の小さいラケットを好む選手はほぼいなくなってしまいました。
しかし、当時は、このような小さなサイズのラケットの方が、コントロールがしやすいということで、多くのトッププロが、面の小さなラケットを使うのが当たり前だったんですね。
で、そのプロスタッフなんですが、かつてはこんな感じのデザインでした。
人気のラケットって、やはりこんな感じで復刻版が出るんですよね。
昔を懐かしむ往年のテニスファンやラケットコレクターにとってはいいかもしれませんが、今からテニスを始めるという方や、競技としてテニスを極めていきたいという方は、最新のラケットを使いましょうね。
プロスタッフの特徴は、ラケットのフレームがしっかりとしていて、面のブレが少なく、安定感のあるボールが打てるというところにあるかなと思っています。ウィルソンのラケットって、ちょっと硬くて、カキーンというイメージなんですが、プロスタッフは適度なしなりがあって、ボールがラケットに乗っかってくれる。それでいて、コントロール性能は抜群という不思議なラケットです。
選手向けのラケットを数多く出しているウィルソンですが、多くのトッププロが、プロスタッフを選ぶのも納得だなという一本です。
HEAD PRESTIGE
ヘッド プレステージ
さて、お次に紹介するのは、ヘッドのプレステージ。
ヘッドのプレステージシリーズと言えば、上の画像のように、代々燃えるような真っ赤な色のデザインを踏襲してきたモデル。
一時期、こんな黒をベースにしたデザインにもなりましたが、それでも赤のラインがアクセントに入っているので、やはりプレステージのイメージカラーは赤なのです。
黒のデザインも渋くて悪くはないのですが、「やはり、プレステージは赤でなくっちゃ」というのが、長年のテニス愛好家の感覚ではないでしょうか。
その意味では、最新のプレステージのデザインはいいですね。
真っ赤な色のラケットって強そうでいいです。
さて、このプレステージなんですが、どんなラケットなのかと言うと、とにかく、ラケットのストリングパターンがきめ細かく、コントロールが徹底的に重視されたモデルだということです。
ストリングパターンが粗い・細かいでどんな違いが生じるかということは、過去の記事にも書きましたので、こちらを参照してください。
ヘッドのプレステージが採用するストリングパターンは18×20
ボールがしっかりとプレーヤーの思い通りにコントロールができ、ピンポイントでの攻めが可能になる一方、ボールの飛びや、スピンのかかりやすさは犠牲になるため、真の意味でパワーと技術を持ったプレーヤーでしか扱えないというモデルになります。
テニスの初心者なんかが、見た目のかっこよさに惹かれてこのラケットを手に取るのは、全くお勧めしません。
使う者を選ぶそんなむつかしいラケットが、ヘッドのプレステージです。
でも、持ってたらかっこいいんですよね、、、
PRINCE GRAPHITE
プリンス グラファイト
さて、三種の神器の最後の一本はこちら。
プリンスのグラファイトシリーズと言えば、日本でも大人気だったマイケル・チャン選手のイメージが強いかもしれませんね。
あとは、ファン・カルロス・フェレーロ選手などのチャンピオンが使っていたイメージが強いかと思います。
ラケットの特徴としては、スロートの中心にある「ブリッジ」ですね。
この形状のフレームは、かつてのテニスラケットでは常識だったのですが、最近ではあまり見かけなくなりました。
この「ブリッジ」が入ることで、打球時のフレームのねじれが抑えられ、コントロールが良くなるというものだったのですが、最近のラケットは、強度が非常に強くなったので、「ブリッジ」など入っていなくても、全く問題なくなりました。
ただ、往年のテニスファンは、このブリッジの入ったラケットを見ると、やっぱり落ち着くかもしれません。
また、グラファイトと言えば、ラケットフェイスのサイズが100平方インチのミッドプラスと、107平方インチのオーバーサイズの二種類があり、どちらも人気でした。
通常、オーバーサイズなんて面の大きなラケットは、競技レベルのプレーヤーはあまり使いません。先に紹介したウィルソンのプロスタッフやヘッドのプレステージの面の大きさが小さかったように、プロの選手というのは、コントロールを重視するので、あまり面の大きいラケットを好まないのです。
でも、このプリンスのグラファイトだけは唯一の例外と言ってもいいくらい、プロからも愛された名器なのです。
ラケットのフレーム厚が薄いため、ボールの飛びが程よく抑えられていて、オーバーサイズであっても、ボールコントロールがしやすかったのが、その一因かと思います。
あまりに人気のラケットだったので、また復刻するらしいですよ。
プリンス公式ホームページでも紹介されていた元トッププロのインプレッション動画。
駒田政史さんのインプレッション
宮地弘太郎さんのインプレッション
駒田政史さんも、宮地弘太郎さんも、かつての名選手ですが、今や40代。
やはり、この世代のプレーヤーはグラファイトなどの三種の神器が全盛の世代ですからね。
彼らのような、スーパーアスリートだけでなく、一般のアマチュアプレーヤーにとっても、今回の復刻はうれしいはず。現代テニスに合わせた進化を遂げた最新のプリンス グラファイトをぜひ使ってみてください。
こちらの最新版のグラファイトは、今の40代、50代のプレーヤーだけでなく、競技レベルの男子学生なんかにも超おすすめです。
BABOLAT PURE DRIVE
バボラ ピュアドライブ
さて、三種の神器の紹介は以上です。
では、なぜ今トッププロが「三種の神器」を昔ほど使っていないのかという話をしますね。
現在のテニスの世界では、もはやおなじみのバボラ ピュアドライブ。
このラケットが三種の神器のラケットと言われるラケットを駆逐していったと言っても過言ではありません。
三種の神器と呼ばれるラケットが、基本的には、
①重い
②面が小さい
③フレームが薄くてボールが飛ばない
などの特徴を備えていたのに対し、
ピュアドライブは、
①軽い
②面がそこそこ大きい
③ボールがとにかくよく飛ぶ
という特徴を備えています。
もともとは、プロの選手がそれほど多く使うようなラケットではありませんでした。
ところが、カルロス・モヤ選手が使っていたことで、インパクトを受けたという方も多いかと思います。
まだ、その当時は日本ではなじみの薄いラケットで、持っている方は少なかったと思います。
一般に流通し、市場で爆発的な人気が生まれたのは、アンディ・ロディック選手が使用して活躍を始めてからではないでしょうか。
プロのテニス選手というのは、有り余るパワーを持っているので、「飛びのいいラケット」ではなく、「飛びを抑えたラケット」を使うという常識を覆したのがバボラのピュアドライブなのだと思います。
この講座でも過去に何度か記事を書いていますが、現代のテニスと、テニスラケットの歴史のつながりは、このピュアドライブを抜きにしては語れない。そう言ってもいいくらいのラケットです。
初心者から、上級者まで、どんな方にも安心しておすすめできる一本です。
バボラ ピュアドライブ
いかがでしたでしょうか。
今はもう三種の神器なんて言い方は古臭いのかもしれませんが、現在販売されているラケットも、さかのぼると長い長い歴史があるのです。
ラケット選びの際には、長くマイナーチェンジを繰り返しながら進化してきたラケットを探すというのも一つの方法です。なぜなら、そこには、長年にわたって試行錯誤を繰り返してきたラケットメーカーの技術のすべてが詰まっているからです。
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