はじめに
今回は練習法に関する記事です。
みなさんは普段どのような練習をされていますか。
上達するために必要な練習がきちんとできていますか。
上達する人ってどんな練習をしているんでしょう。
参考のためちょっとプロの選手の練習をのぞいてみましょう。
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プロテニス選手の練習法
プロのテニス選手って、どんな練習をしているんでしょうか?
プロのテニス選手の「試合」を見ることはあっても、「練習」を見る機会はあまりないですよね。
プロだから特殊な器具や、特殊な練習法を考えてやっている?
いやいや、実はプロの選手の練習法なんて、驚くほど単純なんです。
もちろん練習に「一工夫」あったりしますが、その内容自体はみなさんが普段テニススクールなどでされている練習とほとんど変わらないのです。
(その練習内容については後述します。)
じゃあ、一般人と何が違うのと言われると、それは反復回数。
一日に4~5時間練習すると言われるプロの選手の反復回数は尋常じゃありません。
練習時間に関してはこちらの記事もご覧ください。
https://mindtennis.net/2017/09/18/practice-2/
それではここからは世界の歴代トッププロたちがやっていたというドリル練習(反復練習)について紹介していきます。
ゲイブ・ハラミロのDVD
ゲイブ・ハラミロのメイキングチャンピオンズ(GABE JARAMILLO MAKING CHANPIONS)
というDVDをご存知ですか。
8人のチャンピオンと、26人のトップ10選手を育てた名コーチであるゲイブ・ハラミロ氏。
彼の指導メソッド、主にトップ選手たちがやっていたドリルメニューについて紹介しているDVDです。
プロ選手の練習メニューについてはこのDVDがとても詳細に教えてくれているので、その内容の概要を紹介しようと思います。
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ボリス・ベッカーの練習法
ボリス・ベッカー選手は1985年ウインブルドン選手権を17歳で制した偉大なチャンピオンです。
彼の練習法は、2対1のラリー。
ボリス・ベッカーは一人でセンターマークのところに立ち、反対側のコートのフォアサイドとバックサイドに練習相手が一人ずつ立ちます。
ベッカーはストロークを軽くジャンプしながら弾むように打ちます。
こうすることで、「早いタイミング」でボールを打つことができるようになると言います。
ベースラインよりも前で、早いタイミングで、ライジングでボールをさばくことの大切さを1980年代にすでに気づいていたベッカー。
恵まれた体格、類まれなパワーだけでなく、ベッカーは時代の先取りをしたテニスをしたから強かったと言えます。
われわれがそこから学べる事は、ただラリーをするだけではなく、「早いタイミング」を意識するなど、何か自分に課題を設定して練習することで一歩先に行けるということです。
アンドレ・アガシの練習法1
その1 ストローク編
アンドレ・アガシ選手は1990年代から2000年代まで長くトップで活躍した名選手です。
管理人の山口が大好きな選手の一人でもあります。
アンドレ・アガシ選手もまたベッカーと同じく、「早いタイミング」で打つことを徹底した選手の一人です。
彼の父親は「ボクサー」でした。
彼の父は知っていました。
思い切り振りかぶって打ってくるパンチはよけることができるが、振りかぶらずに小さく放ってくるパンチはよけづらいと。
そこでアンドレ・アガシにも同じことを教えました。
大きく振りかぶらず、小さなテイクバックで鋭く打てと。
アンドレ・アガシの代名詞は「ライジングショット」
とにかく早いタイミングでのストロークが彼の武器。
その武器を磨き上げたのがこの練習法。
彼の練習法もラリーでとにかく相手とたくさん打ち合うことです。
コートのど真ん中でラリーをしたり、クロスでラリーをしたり、その際、コーチであるゲイブ・ハラミロ氏はこう声をかけ続けます。
Inside line! Inside line!
ベースラインの内側に入れ!内側に入れ!と。
ベースラインよりも内側に踏み込んで、少しでも早くボールを返す。
これがアガシの強さの秘密です。
アガシ選手はこう語ります。
「前に行くか、後ろに行くかは選手が選べる。」と。
アンドレ・アガシの練習法2
その2 サーブ編
アンドレ・アガシ選手は一日に20分のサーブ練習を行っていました。
とくにバックサイドから高くキックするセカンドサーブを練習していたそうです。
「良いセカンドサーブを打てる選手が試合に勝つ」
これがアガシの哲学だったそうです。
コンチネンタルグリップよりもさらに薄いバックハンドのイースタングリップでラケットを握り、強烈なキックサーブを打つ練習をひたすらやっていたそうです。
アガシ選手のサーブ・スマッシュのグリップについてはこちらの記事もご覧ください。
スマッシュのグリップ
試合のときにどんなサーブを打ちたいかというところからさかのぼって練習法を考える。
ここがプロと一般人の違いですよね。
ただ、漫然と速いサーブを打つことだけ練習しているアマチュアとの差はこういったところから生まれます。
ピート・サンプラスの練習法
ピート・サンプラス選手はアンドレ・アガシ選手と同時代のチャンピオンです。
二人はライバルとして数々の名勝負を生み出しました。
サンプラスの練習はアガシと対照的です。
アガシ選手が朝に練習したり夜に練習したりとバラバラな時間に練習するのに対して、いつも決まった時間に決まったコートに現れ、決まった練習をこなして帰っていく。
これがサンプラスのスタイルです。
テニスのプレースタイルも、全盛期はまるで正確な機械のように淡々とポイントを重ねていくような印象でした。
そんなサンプラスの練習内容は、
①ストロークのクロスラリー フォアサイドを20分
②ストロークのクロスラリー バックサイドを20分
③ボレーを20分
④サーブを20分
だそうです。
オールラウンダーと呼ばれたそのスタイルにふさわしいとっても律儀な時間配分ですよね。
このうち注目すべきはボレー練習。
通常トッププロでもボレーの練習にはここまで時間をかけないそうです。
多くの選手が5分くらい練習しておしまいのところをサンプラスはじっくり時間をかけて取り組みます。
それがあの神業としか思えないようなボレーを生み出していたんですね。
ちなみにサンプラスはボレー練習のときにネットに全く詰めずにサービスライン付近で徹底的につなぐ練習をするそうです。
タッチを磨くためにはこれが一番なんだとか。
多くのアマチュアがネットにべったりついてボレーを練習しているのと大きな違いですね。
ネットにべったりついてボレーすればローボレーやハーフボレーみたいなむつかしい球はきません。
ボレーが簡単にできて、うまくなったような気がするかもしれません。
ですが、ボレーで練習すべきはローボレーやハーフボレーなどの足元のむつかしい球ですよね。
彼はそのむつかしい球を、「頭を動かさず、低い姿勢を維持して」打ち続けることを徹底していました。
そして、もう一つ特筆すべきはサンプラスのサーブ練習。
サンプラスはアガシと対照的に、セカンドサーブの練習を一切しません。
サンプラスのサーブに関する哲学、それは、
「サーブはエースを奪う機会が2回与えられているだけ」
というものでした。
彼にとってはファーストもセカンドも関係ありません。
与えられた2球は両方、猛烈なサーブでエースを奪いに行きます。
セカンドサーブで200キロということもしばしばありました。
そして彼が練習したのはフォアサイドからワイドへのサーブだそうです。
2年間、ずーっと同じコースに打ち続けるように練習していたということです。
もはや人間ばなれしたマシーンとしか思えないですね。
ジム・クーリエの練習
ジム・クーリエ選手は1990年代初頭に活躍したチャンピオンです。
野球のバッターのような独特の両手打ちバックハンドでしたが、その威力は強烈。数々のビッグタイトルを手にしました。
クーリエ選手の練習はラリーよりも球出し練習がメイン。
彼のやっていた3つのドリルを紹介します。
①ストローク9本の球出し。
彼が好んだ練習は、9本セットのストロークです。コーチの球出しで練習します。
フォアハンドを2球打った後に、バックハンドを1本打つ。これを3セットやります。
クーリエ選手は1ポイントを取るのに最低9本は返球する必要があると考えていました。
9本連続での球出し、実際にやってみると、走る距離が長いので、相当ハードです。
これにはメンタルを鍛える効果があります。
試合のときに、練習よりもつらい状況を想定して練習しておけば試合は楽になります。
反対に練習のときに試合よりも楽をしていては、試合でいざというときにがんばることはできません。
②パッシングショットの練習
クーリエ選手はパッシングショットに関しても、自らにきつい練習を課していました。
10本パッシングショットを決めるまで終わらないというドリルです。
練習パートナーはボレーヤーとなり、クーリエ選手のパッシングショットをブロックします。
それを打ちぬくためのパッシングショットは、打点を前にして、鋭い球でなくてはなりません。
とても実践的な練習です。
③決め球の練習
クーリエ選手が行っていた3つ目のドリル。
それは決め球の練習です。
コーチが浅い球を出し、それをクーリエ選手が決める。
浅い球を絶対に見逃さず決めることは相手へのプレッシャーになります。
浅い球を打てば決められるのだから、相手は深い球を打つしかなくなる。
クーリエ選手は決め球に絶対の自信を持っていました。
その自信の根拠はこの球出し練習にあったというわけです。
やっぱり基本が大切なんだということをクーリエ選手の練習が教えてくれます。
モニカ・セレスの練習法
モニカ・セレス選手は1990年代のはじめに活躍したチャンピオンです。
彼女が練習で毎日やっていたドリルはアングルショットのラリーです。
「多くの選手がアングルショットの大切さを認識していながら、ほとんどそのショットの練習に時間を割いていない。」
とゲイブ・ハラミロ氏は言います。
実際その通りで、多くの選手が、練習で普通のクロスラリーしかしていないのに、試合になると、急角度のショートアングルを狙う。
入るわけないんです。練習してないんだから。
アングルショットを練習しているという選手であっても、多くの場合、コーチの球出しで数分練習したらおしまいでしょう。
モニカ・セレス選手は違います。
ショートクロス同士のラリーを毎日毎日練習パートナーとやっていたのです。
「毎日やる」ということと「ラリーで」というところがポイントですね。
この練習をやることで、ショートクロスのショット以外にも、意外な恩恵が生まれます。
それは「ラケットのヘッドスピードが上がる」ということ。
ショートクロスにボールを打つためには鋭いスイングで回転をかける必要がありますから、必然的にスイングスピードがあがってくるんです。
実際、モニカ・セレス選手のスイングスピードは女子選手としては驚異的でした。
また、セレス選手はストロークのラリー練習、サーブのリターン練習においても積極的にアングルショットを狙う練習をしていました。
彼女にとっては一本目から攻撃のショット。
「コートのセンターに打つなんて、ミスショットと同じこと」と考えていたようです。
一本目で角度をつけて相手をコートの外に追い出し、二本目でオープンコートにエースを打つ。
これがセレスの強さ。
もし仮に相手がボールに追いついたとしても、左右に目いっぱい走らされた相手の足はボロボロに酷使されていきます。
これがセレスの強さ。
圧倒的な攻撃テニス。セレスは1990年代に時代のはるか先を行くテニスをしていました。
また、リターン練習に多くの時間を割くというのも彼女の練習の特徴だったそうです。毎日20分ぐらいリターンの練習をする。
リターンではクロスに角度をつけて打つことを徹底します。
ストレートに打つと自分の余裕がなくなるからです。
後述しますが、ここが、メアリー・ピアース選手のリターンとの違いです。
メアリー・ピアース選手はリターンをセンターめがけて打っていました。
詳しくは後述。
マルセロ・リオス選手の練習
マルセロ・リオス選手は管理人が最も好きなテニス選手です。
1990年代に活躍した選手で、175cmとテニス選手としてはかなり小柄でしたが、その俊敏な動きと驚異的なスイングスピードで世界ナンバーワンとなりました。
リオス選手が毎日やったメニューにコーチの手出しのボールを10球、全力で強打するというものがあります。これが彼のスイングスピードの源。
10球を3セットが一つの目安になります。
慣れてないうちにこれ以上やると肩を壊す危険があるので気を付けましょう。
コーチが選手のそばからボールを出すので、選手は自分からボールをしっかりと打たないとボールスピードが出ません。
ボールにスピードを出すための理にかなった打ち方を身につける練習としては最適でしょう。
もう一つリオス選手が取り組んだのが、前述のボリス・ベッカー選手と同じ、ジャンプしながら打つストロークです。
これは、小柄なリオス選手が高い打点からボールを打つために練習していたというだけではありません。
ジャンプしながら打つことで、少しでも早いタイミングで相手コートにボールを打ち返すことができるようになります。
リオス選手のジャンプしながら打つバックハンドは、「フライングバックハンド」「ジャックナイフ」と呼ばれ、その切れ味は抜群でした。
私は2017年の現在でも、リオス選手の動画を繰り返し見て練習の参考にさせてもらっています。
メアリー・ピアース選手の練習
メアリー・ピアース選手は1990年代から2000年代前半にかけて活躍した選手です。
当時の彼女は鍛え上げられた驚異のフィジカルを持っていました。
その体を作り上げたのはもちろんテニスコートの外でのトレーニングの成果でもあるのですが、コート上でのトレーニングも非常にハードなものでした。
彼女は2対1のラリーを3分間、これを7セット行います。
たかが3分とあなどることなかれ。左右に振り回されて走ることを3分。これはもう地獄です。
これを毎日7セットもやるんですから、メンタルも当然強くなります。
闘志あふれるピアース選手のプレーはここからきていたんですね。
また、セレス選手のところで書きましたが、彼女はリターン練習でセンターにボールを打ち返すように練習していました。
これにはミスを最小限にするという理由があったそうです。
セレス選手が一本目からコートの端を狙っていくこととは対照的ですね。
また、練習の仕方も対照的でした。
セレス選手が決まったコースに打たれたボールを返球するのに対して、ピアース選手は、ランダムに打たれたボールを打つ練習していました。
ピアース選手はボールが事前にどちらに飛んでくるかわかっている状態では練習にならないと考えていたようです。
同じプロでも練習に対する考え方は全然違うものなんですね。とても興味深いです。
トミー・ハース選手の練習法
トミー・ハース選手は2017年の現在で39歳!
まだまだトップで活躍するベテラン選手です。彼の武器は鋭いバックハンドのスライス。
両手打ちバックハンド全盛の現在ですが、片手打ちバックハンドでキレのあるバックハンドスライス。
これを武器にするため、練習のときから徹底的に球出しでスライスを打つ練習をします。
スライスをわざと短く打って、相手の球が浮いてきたところを回り込んでフォアハンドで叩く。
このパターンをひたすらやっていたそうです。
練習で繰り返しやっているから、試合のときはそれを出すだけ。
反復練習でやることの意味はそこにあります。
試合のときに考えながらボールを打っていてはダメなのです。
無意識で同じことができるくらいになるまでやらないといけないのです。
また、ハース選手はサーブをワイドに打って、一本目のストロークでオープンコートに決めるという練習もひたすらやっていました。
これもパターンを体に覚えこませるためのものですね。
とにかく反復。プロの練習って実はこんなにも単純なのです。
マリア・シャラポワの練習法
マリア・シャラポワ選手は今やテニスをやっていない人でも知っている女子テニス界のスター選手ですね。
その容姿ばかりがクローズアップされますが、当然ながらプロテニスは容姿だけでチャンピオンになれるような世界ではありません。
彼女の練習は大変厳しいものでした。
彼女の練習はとにかく早いタイミングで前に出てボールを打つこと。
彼女は深いボールをライジングでフラットに厚く打ち返して打つのが得意でした。
さらにライジングよりも早いタイミングで打つことも練習していました。
それがドライブボレー。
相手のスキを見て一気にコートの中に踏み込んで打つドライブボレー。
190cmという長身から高い打点で打つからこそできることかもしれませんが、我々もドライブボレーという選択肢があるということを覚えておきましょう。
錦織圭選手の練習法
最後に錦織圭選手の練習を紹介しましょう。
彼の一番の弱点はサーブでした。
彼のサーブの強化のため、ゲイブ・ハラミロ氏が選んだ練習法は、ラグビーボールを投げるというものでした。
みんさんはラグビーボールを投げたことがありますか。
通常の丸い球体のボールと異なり、ラグビーボールはスクリューのような回転をかけないと真っすぐに飛んで行ってくれません。
この回転をかけるためには手首を使うことが必要です。
サーブに必要な手首の使い方を覚えるためにラグビーボールでのキャッチボールは最適なんだそうです。
みなさんもだまされたと思ってラグビーボールを扱ってみてください。
その効果に驚くはずです。
次に彼が取り組んだ練習はストローク練習です。
練習パートナーと打ち合いをするのですが、2本クロスを打って、1本ストレートに打つというメニューを繰り返します。
同じコースに何本も同じショットを打つと、相手は慣れてしまいます。
3本目にはコースを変えるように錦織選手は練習していたようです。
もう一つ、彼はストロークのときに、ボールの浅い・深いということに神経を使っていました。
ドロップショットを打ったり、ショートアングルを狙ったり、とにかく錦織選手はコートを広く、まんべんなく使う。
だから相手にコースを読まれづらいわけです。
ラリーが単調になると、どんなに速いボールを打てる選手でも、相手は慣れてしまいます。
ペースを巧みに変化させて主導権を握る。
これが錦織選手の強さの秘密ですね。
最後に錦織選手のボレーの練習についてです。
錦織選手のボレーのフォームは悪いとゲイブ・ハラミロ氏は断言します。
もともと錦織圭選手はボレーが得意ではなかったそうなんですが、前にしっかりと詰めてボレーをさせることで、その決定力が上がったということです。
ネットに詰めて練習するときには「オーバーネットするぐらい前に来い」とゲイブ・ハラミロ氏は言っていたそうです。
錦織圭選手の可能性についてゲイブ・ハラミロ氏はこうも言っています。
その能力からすれば、チャンピオンになることは可能だ。
数々のチャンピオンを育ててきたゲイブ・ハラミロ氏がそういうのですから、錦織圭選手にはまだまだこれから期待ですね。
早くケガから復帰してほしいところです。
まとめ
いかがでしたか。
トッププロの選手の練習法は。
私の正直な感想は、どの練習も拍子抜けするほど当たり前で、単純な練習だなということに尽きます。
ただ、これを毎日毎日やることができるか。
それがプロとアマチュアの違いです。
よくよく吟味あるべきものなり。
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