プロテニス選手の振動止め
今回は道具に関する記事です。
みなさんはラケットの
「振動止め」って使われますか?
私は使っています。
ラケットの面の下の方に、
黒くて丸い小さなゴムがついていますが、
あれが振動止めですね。
振動止め
バイブレーションアブソーバー
ダンプナー
などいろいろと呼び名はありますが、
ここでは「振動止め」
と呼ばせていただきます。
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さて、振動止めの効果についてですが、
もちろんラケットとボールが接触したときの
不快な振動を除去するというのが
その効果です。
テニスエルボーなどの予防につながるか?
ということも以前からよく聞かれることなのですが、
医学的にはまだはっきりとわかっていない
とも言われています。
振動止めをしていようとしていなかろうと、
打ち方が悪ければテニスエルボーにはなります。
振動止めに、
「ケガの予防」という過大な期待は
しない方がよいでしょう。
重度のテニスエルボーになってしまえば、
どんな振動止めを使おうと、
関係ありません。
痛いものは痛い。
テニスエルボーに関しては、
打ち方が良ければそもそもなりません。
その打ち方に関しては、
また別の記事に譲ります。
さて、プロ選手たちが
この「振動止め」をどのように使っているか
ということなんですが、
ちょっと振動止めの歴史について
振り返ってみましょう。
ラケットが木製の時代、
過去の写真なんかを見ても、
この振動止めのパーツらしきものを付けてる選手は
見当たらないんですね。
はっきりとはわかりませんが、
おそらく、この振動止めというのが
プロのテニス選手の間に広まり、
一般的になっていったのは、
1980年代後半~1990年代初めごろではないか
と思われます。
ただ、
この振動止めが登場してからも、
多くのプロ選手はこれを使いませんでした。
なぜか。
手に伝わる振動というのは
大事な「打球情報」の一部なんです。
プロの選手は、
手のひらに伝わってくる振動に対して
非常に敏感。
振動止めで
その「情報」が減ってほしくない
という思いがあったのでしょう。
なんせ、
グリップの部分でさえ、
我々が使う市販のラケットのような
ウレタンのふわふわグリップではなく、
本革のレザーに巻き替える選手がいるくらいです。
(その方が手にダイレクトな打感が伝わるからです。
もっともレザーのグリップを使う選手も
最近は昔ほどいませんが。)
加えて、
かつてのプロテニス選手たちは
「ナチュラルガット」
を使って当たり前。
現代のようなハイブリッドという概念はなく、
縦糸も横糸もナチュラルガットというのが基本
だったわけです。
ナチュラルガットがボールと接触したときの、
ボールをつかんだような感触、
その感触を重視していたのではないかと思われますが、
当時のプロは振動止めをあまり好みませんでした。
振動止めは、
テニスの愛好家たちが使っているおもちゃ
というぐらいにしか思われていなかったことでしょう。
しかし、
1990年代に入り、
プロのテニス界は新たな時代を迎えます。
ピート・サンプラス選手と
アンドレ・アガシ選手の登場です。
彼らは二人とも振動止めを使っていました。
サンプラス選手の振動止めは私のラケットにもついていますが、
いまだに「サンプラス」
の名を冠して売られています。
アンドレ・アガシ選手が使っている振動止めは、これ。
そう、ただの輪ゴム(笑)
アガシ選手はインタビューで語っています。
「輪ゴムこそが最高の振動止めだ」と(笑)
幅が6ミリほどのやや太めのタイプですが、
アンドレ・アガシ選手は、
銀行で札束を束ねるのに使われていたもの
を使っていたそうです。
一応輪ゴムのリンクも載せますが、
こんなもん、100円ショップで買いなさい(笑)
さて、
この二人の偉大なチャンピオンが使っていたことにより、
振動止めは一気にメジャーになったように思われます。
なぜ、彼らが振動止めを愛用したか。
その答えは、
おそらくガット(ストリング)にある
と私は考えています。
アンドレ・アガシ選手と、
ピート・サンプラス選手、
彼らのストリングが振動止めを必要としたのではないか
と私は推測しています。
どういうことか。
彼らのストリング、
実は当時としては相当特殊です。
アガシ選手は、一時期、
アラミックス繊維でできたストリング
を使用していました。
これは防弾チョッキにも用いられる素材で、
非常に丈夫なんですが、
なんせ反発力がない。
アガシ選手は、
このストリングの特性を利用して
ボールをひっぱたいていました。
ハードヒットしてもボールが飛び過ぎない。
現在はポリエステルストリングが
そんな特性をもっていますが、
当時まだポリを使っている選手は少なかったのです。
これに対して、
サンプラス選手が使っていたストリングは
ナチュラルガットです。
ただし、
張り上げていた硬さは80ポンドを超えていた
と言われています。
ナチュラルガットを
そのようなテンションで張り上げると、
ラケット面はほとんどたわまず、
板のようになります。
トランポリンのような柔らかいたわみが
一切ないため、
ボールは飛びません。
サンプラスもまた
ナチュラルガットを
今のポリエステルガットのような打感
になるように使っていたのだと思われます。
そんなガチガチのラケット面が、
ボールを受け止めるときの衝撃を少しでもやわらげるために、
彼らは振動止めを必要としたのではないかと思われます。
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では、
現在のトッププロが
どのような振動止めを使っているかというと、
実は振動止めを使う選手は半数ぐらい
と言ったところです。
ビッグ4と呼ばれる4人の選手を見ても、
フェデラー選手、マレー選手は振動止めなし。
ジョコビッチ選手、ナダル選手は振動止めを使っていますね。
タイプで言うと、
スピンでグリグリと押していくようなタイプや
強打が中心の選手は振動止めが好きという傾向にあります。
彼らは多少のオフセンター気味のショット
(スイートスポットに当たらなかったショット)
でもしっかり打てるようにしたいわけです。
反対に、
華麗なタッチで、
コントロールをするようなタイプのプレーヤーは、
振動止めがないナチュラルな打感を好みます。
彼らは、ストリングの微妙な感触で
ボールをコントロールしているのです。
結局振動止めを使うかどうかというのは、
最終的にはプレースタイルと打感の好みの問題です。
アマチュアプレーヤーであれば、
自分の目指すプレースタイルの選手が
どんな振動止めを使っているか
ということをチェックして
真似してみるのもひとつの手です。
ただ、
振動止めを使うと言っても、
プロの選手はこんな振動止めを使いません。
これ、よく見てください。
振動止めのパーツが大きいでしょ。
これって、
振動をよく吸収してくれるんですけど、
その代わり手へ伝わる情報がほとんどなくなるんです。
ですから、
プロの選手はあまり使いません。
アマチュアでも、
トップの選手はほとんど使いません。
で、そういう選手たちは、
こういう大きな振動止めを使っている人を見て、
「だせーな。」と思ってる(笑)
もし使うなら、
プロの選手が使っているような
小さな振動止めを選びましょう。
といわけで、プロ選手御用達の振動止めをいくつか紹介します。
ラファエル・ナダル選手
ノバク・ジョコビッチ選手
スタン・ワウリンカ選手
錦織圭選手
杉田祐一選手
(てんとう虫のを使っているそうです。かわいいですよね。)
西岡良仁選手
振動止め一つでもテニスは変わる。
たかが道具、されど道具です。
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